院長先生のコラム11月号
☆ 万葉の犬養節(いぬかいぶし)
医学を目指す前、私は大阪大学工学部の学生だった。当時の総長は正田健次郎氏で、後に皇后となられた美智子様の叔父に当たる数学者。講義はすごい人気だった。犬養孝講師(後に教授に、更に退官後は甲南女子大へ)の万葉集の講義も人気だった。教材は岩波文庫の「万葉集」上下2巻で、私が受けたのは1年間で、上巻の最初に近い数十ペ-ジであった。いっぱい書き込みをしたその本を探したが発見できず、残念。講義は教室に留まらず、日曜日に万葉の旅と称して、山の辺の道など万葉の故地を、先生の講義を聞きながら歩く。教室でもそうであったが「犬養節」と呼ばれる独特のメロディ-に載せて朗々と和歌を歌われる。それをまねて皆で歌った興奮を今も忘れる事が出来ない。先生の記念館が明日香村にあるので是非訪ねたいのだが、未だ実現していない。夢多き日の忘れられない想い出。
【院長/阪東 昭政】
『ザ・淀川 平成28年11月号掲載』